自立支援法の成立、診療報酬のダウン改訂 など重症心身障害児・者には、厳しい、不安な時代の幕開けです。
障害の重い人たち、一人では移動できない、食べることができない、呼吸が十分できない、こうした人たちが、笑顔で生活できるようになること、これは、まさしくどの時代にでも、私たちが生きていく希望につながります。こうした人たちが守られてこそ、多くの人のいのちが大切にされるのです。私たちは、重症心身障害の方の、医療、看護、生活支援をする中で、時代の希望を利用者といっしょにつくりでだしているのだと思います。2006年は希望のある年にしていきたいと思います。
びわこ学園の創始者 糸賀一雄は、「共感という関係の中での自己実現」という考えをうち出しました。独りよがりの自己実現ではなく、お互いが、お互いの他者実現を願うなかでの自己実現です。それは、人は、人と人の関係の中で、育ち成長し豊かな生活をいくることができるんだという信念から生まれています。 糸賀は人をとりまく、関係や環境が豊かであることが、人間成長と生きることのへの鍵と考えました。糸賀は、家族や支援者はよき地下水、地下茎、土壌、水になれと語っています。豊かな環境の中で、人は人らしく生きることが可能になります。私たちは、お互いが、お互いのいい環境になれることが、大切であると考えてきました。私たちのケアで利用者の笑顔がうまれてくる、またその笑顔が私たちを勇気づけます。このような「共感という関係の中での 自己実現」をめざしたいと思います。
医療や看護、介護の理念として、ナイチンゲール看護を掲げたいと考えています。
ナイチンゲール及びその考え方を継承したKOMI理論では、看護や介護のケアのものさしとして以下のような点をあげています
それには、生命過程(身体過程)だけでなく、生活過程(食べる 動く 伝える)社会過程(住居 制度 社会参加)、自然過程(光や風)を通して、利用者に働きかける必要があります。
重症心身障害の方は、生活の中で、例えばいかに、誤嚥を少なくする食事をするか、緊張の少ない姿勢をとるかが、生命力に関与してきます。また光や風、温度が、感染に対する抵抗力に関与してきます。また、意欲的な生活が、免疫力につながります。医療、看護、介護、生活、そのすべてを通して、生命力の過程に働きかけ、その幅を広げる取り組みができるのです。このように、糸賀理念とナイチンゲール看護を掲げて、今後医療、看護、生活の取り組みをさらに発展していきたいと考えます。
2006年を、利用者にとっても、職員にとっても、家族にとっても希望のある年にしていきたいと考えます。私たちの使命は、どんな心身の状態であっても、人生にチャレンジできる、楽しめる状態を創り出すことです。これは多くの人たちへの希望になります。私たち自身にとっても希望になります。多くの人の希望に向かって、小さな現場からの努力をいっしょに始めていきましょう。
また、こうした理念に向かって一緒に歩んでくださる、看護スタッフ、医療スタッフ、介護・生活支援スタッフをびわこ学園では求めています。是非連絡してください。
(参考文献: KOMI理論 金井一薫著)