重症心身障害の方は、自分でたべること、表現すること、移動することができない。日常生活の多くは、周囲の他者にゆだねられる。
栄養摂取は、
@食べ物の選択
A摂食嚥下の過程
B消化管の通過・吸収・排泄など、すべてのプロセスが、うまくいくように支援することで、はじめて成立する。
また、その結果は、実に、正直に表現される。
・@では、味覚や食物形態が、本人に会わないとき、食べる、食べさせる協同関係が、うまく機能しなくなる。
・Aでは、不適切な、姿勢や介助や食物形態では、誤嚥をくりかえし、感染を反復する、
・Bでは、嘔吐、下痢を繰り返し、体力の低下が出現する。
総合的な、結果は、意欲の低下や免疫力の低下として表現される。栄養摂取の過程が不十分であれば、どんなにケアがよくても、どんな感染に対応できるな医療があっても、褥瘡が発生し、感染が反復する。また、日常生活への活動の意欲は低下する。
利用者の方の生活の質をアップしていくためには、利用者に関わる多くの支援者が、この栄養摂取の過程のすべてにわたって、共通理解と共通の方針を持つことが重要である。
医師が、アレルギーをなおすことを優先した時に、アレルギーは一時的に軽減したが、微量元素の欠乏がおこり、逆に全身の湿疹が増悪した例を経験した。
肥満の問題を解決しようとして、栄養摂取量を減らしたら、3ヵ月後に感染の反復で、栄養不良状態に気づかれたことがあった。味覚的、栄養学的に優れていても、介助の姿勢や食べさせ方の問題から、嚥下がうまくできず、栄養摂取がすすまなかったり、誤嚥を反復する例があった。栄養摂取ができていても、胃食道逆流や消化管運動能力の低下や便秘、イレウス、の問題が放置されていたために、嘔吐が頻発し、状態の悪化の認められる例があった。しかし、これらの問題点がチームで共有され、改善プランが立てられると、状態は改善していった。
部分的に正しくても、どこかに不具合いがあると、利用者の栄養摂取という目的は達成されない。このプロセスのすべてがうまくいくには、多職種による栄養サポートチームが必要である。いろんな職種が、それぞれの立場で、栄養摂取にたいして、意見を出し合い、課題を点検する。そして共通の目標を立てる。自分の意思をうまく表現できない利用者に変わって、栄養サポートチームの討議や病棟でのケースカンファレンスが代理判断を支援していく。
重症心身障害の方は、成長につれて、身体の変形が進行し、呼吸や消化管の問題が複雑にからみあって、栄養摂取が困難になる。また、直感的な食べたいという本能的、生理的欲求が周囲に理解されにくい。栄養サポートチームでの多面的な評価と方針が、利用者の生活の質をアップさせていく重要な鍵となっていく。そういいった視点で、当園の栄養サポートチームを育てて生きたい。