びわこ学園創立50周年を迎えてセンター草津の状況と個人的な想い

128日 公開講座でのメッセージ   タイムカプセル2013

 

        びわこ学園医療福祉センター草津 施設長 口分田政夫

 

 

平成25年は、びわこ学園創立50周年で様々な事業が行われた。今日は、その最後をかざるイベントである。平成263月には糸賀生誕100年を迎える。

内部に眼を向けると、今年は、特に平成25年の12月には、電子カルテという大きなシステムの変更を行った。これは、歴史的なことである。次に平成25年は加齢による重症化に直面し、いのちの意味を問う1年となった。生きる喜びを人生の終末期にも感じあえることができるのだろうか? とそれぞれが悩んだ1年だった。

 びわこ学園の役割は、

「この子らを世の光に」という理念の実践だと思う。そして、そのために、いのちのセーフティーネットの役割を果たすことだと思う。

 いのちとは生命という意味でなく、生きている存在、人格の全体性という意味である。

いのちの中身を3つに分類してみる。

@   身体的なサポート 安心安楽、不快がない状態をめざす。医療・介護という基礎的な支援が重要です

A   気持ちのサポート 生きている存在が、どのような身体の状態であっても喜びを

感じれるようにする。 コミュニケーション、関係性、活動、などを通して実践します

B   生活のサポートです。地域生活支援 

これには二つあって

a ひとつは入所支援である。 短期、長期、1日から生涯の支援まで、地域生活を支援していく。これは短期と長期を統合する考え方です。長期と短期は、単に期間の違いだけである。

b ニーズに応じた地域生活支援

医療、療育、ニーズに応じた地域支援 外来、リハビリ、訪問事業などなど

 

10年後具体的にめざすもの

 あと、この建物を20年近く使用することを考えて

@   病棟の増築、改修、アメニティの改善 

    8床程度の増床を考えたい  

A   外来療育棟の増築、改修 ニーズにこたえる

 

以上の改修を通じて、後20年のニーズにこたえ、使用できるハードにする。

そうしてニーズにこたえながら、10年後から、新しいびわこ学園医療福祉センターの将来構想がスタートする予定である。これは、次世代の若い人たちの力に託すことになろうかと思う。現在の若い職員たちが、現場で感じていることを新しいびわこ学園の構想に反映されていくことを期待する。

 また、平成263月は、糸賀生誕100年を迎える。糸賀の理念や思想を、振り返り今日にいかす道を探ることが大切だと思っている。最近、糸賀のこの子らを世の光にという思想の背景に、教育哲学の木村素衛と交遊があることに関心を持った。糸賀はこうした哲学を現場の実践を通す中で、障害福祉の理念をつくりあげていった。その木村がいう教育の哲学に、絶対愛と向上愛がある。向上愛より絶対愛がより基本的上位にくると木村はいう。絶対愛、すなわち、「他と置き換えることができないその瞬間に経験しているそのことに最高の価値がある。」とする思想である。重症心身障害の現場で実感することでもある。糸賀は、この哲学や波多野の(他者実現の中での)自己実現をめぐる哲学思想を、重症心身障害の現場の経験を積み重ねる中で、発展させて、発達保障、横軸の発達、そして「この子らを世の光に」に到達したと思われる。

糸賀は重症心身障害の問題は、いよいよ、「いのち」そのものの問題に取り組むことになるといっている。我々が今取り組んでいることは、生活の充実の枠組みを越えた、まさしく「いのち」の充実へのアプローチなのだと思う。身体的にどんな弱くても、死を前にしても、そして、たとえ死んだ後も、いのちのバトンタッチとしての「いのち」の充実はあり得る。このために、医療、福祉、教育は全力を尽くすこと、糸賀思想から教わったことを日々かみしめながら仕事を続けていきたい。

 

 糸賀が影響を受けた、教育哲学者木村の言葉

「 愛する人にとって、自己の死はなんでもない。大きな交響曲の1音が私の一生であろう。発すべき時に音を発した時、そして消えたときそれでいっさいはよい。秋雨よ静かにふり続け。」この言葉は、50年の歴史を考える上で、とても印象的な言葉だと思った。そうだ我々は、歴史の中では、一つの音と考えればよいのではないだろうか?。

利用者が発する音、それに呼応して、職員、ボランティア、家族が奏でる音、それらがハーモニーとして、日々の積み重ねの中で曲を作っていく。現実的ないのちが失われても、人が去っていっても、発した音は、「いのち」という交響曲の中で生き続ける。50年を終えて、大きな交響曲になっていたと実感する。次の10年我々は、お互いの音に耳をすませながら、そしてハーモニーとして共鳴しながら、新しい楽章を作っていきたい。

 今日は、50周年ラストをかざるコンサートに、「自然。いのち つながり」を歌う蜂谷清香さんがきてくださった。

10年後 音を発し、耳を澄ませ、「いのちの輝き」という、いい曲をいっしょに作り上げるびわこ学園でありたい。これが10年後に向けたメッセージである。