創立60周年を迎えて(山﨑理事長)
山﨑理事長挨拶
日頃びわこ学園に対し、ご支援いただいている皆様方に御礼申し上げます。
さて、今年はびわこ学園創立60年を迎えました。
近江学園から受け継いできた「発達保障」という考え方、糸賀一雄先生が掲げられた「この子らを世の光に」という理念、岡崎英彦先生がいつも言っておられた「本人さんはどう思てはんにゃろ」と言う、障害児者を中心に置いたお互いの人間的なかかわりの大切さ等を受け継ぎながら我々びわこ学園は60歳と言う年齢にまで、育ってきました。
開設当初は、第一びわこ学園・第二びわこ学園という入所施設の運営をまずはしっかりと安定させながら、在宅障害児者の支援に向けて事業を次第に繰り広げるようになりました。入所利用者の日々の活動をしっかりと組み立てると同時に、在宅障害児者の通所施設を圏域ごとで開設し、外来診療の充実、重症心身障害児者だけではなく知的障害児者の支援、訪問介護や訪問看護事業所の設置、グループホームの開設 湖北地域での診療所の開設等々、思い浮かべるだけでもこの60年間に様々な事業を繰り広げ、入所生活支援と在宅生活支援を分け隔てなく、どちらもその状況に合わせて、必要な支援を実施してきました。まだまだ十分な支援とは言えませんが、びわこ学園が開設した頃の、入所か在宅かの二者択一的な生活の選択から、まだまだ条件には限りがありますけれども、ご本人の希望される生活に寄り添う支援ができつつあるように思います。
しかし、もう一方で、これも長い時間経過の中での変化ですが、重症心身障害児施設を利用される方々の状態が大きく変ってまいりました。施設に入所している利用者の方々は、単に年をとられたというだけではなく、障害が進行したり、二次的な障害が加わるなどの重度化・重症化が進んでいきました。また、医療的なケアが必要な在宅生活の方々の短期利用も始まり、開設当時には想像もできなかったような、さらに重度な、さらに医療的なケアの必要な利用者が増え、入所利用の50%以上を占めるようになってきています。
一方、在宅障害児者においても、通所施設では、医療的ケアの必要な方々が増えてきていますし、医療的ケアの必要な方々が全体の50%を超える通所施設も出てきました。また訪問看護事業所では、就学前の医療的ケアが必要な子どもさん達を支援することが増え、日中一時支援においては全体の70%以上が医療的ケアを必要とされる方々で占める状況となってきています。
このように、入所生活においても在宅生活においても、利用者の状況が大きく変わり、各事業運営についての新たな局面に差し掛かってきています。
全国の重症心身障害児者施設におきましても、同様な利用者の変化が見られ、またその運営形態が少し変わりつつあります。びわこ学園と同じような、医療と生活の両方の支援をする施設と、これまたその地域の状況にもよりますが、医療的ケア児を主として見ていく入所施設も開設され始めている所です。
我々重症児者支援を取り巻く環境は、以前と違って大きく変化ししてきていることも事実です。そして今、びわこ学園が実施してきた重症児者支援の取り組みの方向性を、今一度確認し、整理していくときが来たのではないかと考えます。
びわこ学園は、命を支え、暮らしを豊かにする支援を目標にしながら、入所でも在宅でも実践を繰り広げている所です。障害児者への一方的な支援ではなく、彼らとの相互の関係性(いわゆる信頼関係)をしっかりと築いていくことを大切にしてきた支援です。それは、岡崎先生が言われていた、障害を持っておられる方々とお互い全力で相対した時に生まれて来る支援の仕事だと考えています。
これからも様々な伝統を受け継ぎながら、様々な変化に対応すべく、事業の再構築も含めて協議を進めていきたいと考えると同時に、重い障害を持つ方々から教えてもらってきた、人間同士の関係性、つまり、しっかりした信頼関係を築くことを守り、共生社会におけるすべての人々の信頼関係の大切さをさらにアピールしていきたいと考えています。
まだまだこれから協議を繰り返しながら進めていかなければならないことばかりだと思いますが、役職員だけでなく、関係者や関係機関の皆様をはじめ多くの方々のさらなるご理解とご支援をお願い申し上げます。
社会福祉法人びわこ学園 理事長 山﨑 正策