施設長コラム
施設長コラム
コロナ感染が継続するなかでの、秋祭りが作り出した心地よい時間とつながり
新型コロナ後の生き方を考えるー(4)心の抗体を育てる(新年の施設長挨拶その2を改変)
- ウイルスとの共生と棲み分け
ところで新型コロナウイルスをどのように考えていけばいいでしょうか。ウイルスは、人類を破滅に追い込む敵として徹底的に戦っていくという態度も一つのあり方です。 様々なウイルスは人類に脅威を与えきた歴史と、人間の遺伝子に入り込み進化させてきた生物学的貢献の姿があります。また、例えば細菌である特定の病原体は、それを排除しようとするだけでは、耐性菌を創り出したり、腸管での菌交代現象を引き起こし正常細菌藪の破綻、別の病原体となる細菌の増殖を引き起こします。腸管内に善玉菌の細菌藪、腸内フローラを形成しておくことが、免疫力アップに重要といわれています。
ウイルスの分野でいくと、例えば今年は、新型コロナが猛威をふるっている反面、インフルエンザは減少しています。これらは、ウイルス干渉といわれている現象ではないかといわれています。新型コロナが減少してもさらに強い病原性を持ったウイルスが現れてくる可能性もあります。病原性の強いウイルスとは、排除するだけではなく、危険を及ぼさないように、コントロール可能なレベルにしていき、棲み分け、共生していく事が重要と考えています。新型コロナウイルスやウイルスも、もともとは森林の中のコウモリの中でのみ、存在していたのに、森林開発や動物の捕獲販売などを契機に世界中に広がったと言われています。 どのようなウイルスや細菌が入ってきたときでも免疫力アップには、腸内フローラのようにウイルスや菌のバランスを 一定の均衡を取りながら棲み分けていくという態度も必要かと思います。野口はるちか氏は、かるい風邪にうまくかかって免疫力をつけていくことを風邪の効用という本にまとめています。
ただ強毒性のウイルスにたいこうするにはそれだけでは不十分で、ワクチン、抗ウイルス剤などで、できるだけ早くコントロール可能なレベルにしておいて共存していくことが求められます。そして日常的にはやはりウイルスを遠ざけていく、接触しても低レベルになる環境で生活することが大切です。マスクや換気が重要なのです。
2. 感染対策で気をつけたいこと
新型コロナウイルスを遠ざけていくことに関して、職員の皆様に、協力を要請したいと思います。それは、食堂、更衣室、休憩室などでのマスクの装着の徹底と換気です。特に食事の際は、マスクをはずしますので、会話を控えていただくようお願いします。シールドで遮られてはいますが、マスクなしの会話は、シールドの前に飛沫を滞留させ、次に座った人に影響を与えます。会話は、食事後マスクを装着してするようにしてください。無症状の方からの感染を予防するために是非協力いただけるようお願いします。食堂のシールドのところには、鬼滅の刃の登場人物たちが、マスクなしの会話はやめるように呼びかけています。
3. 心のウイルス感染に対してはお互いの抗体を育てていこう
新型コロナ感染で、もう一つ気をつけたいことは心のウイルス感染です。感染者、濃厚接触者への感染対策は必要ですが、その人たちを誹謗中傷、非難、排除したくなる心の動きには十分気をつける必要があります。
以下は1月22日のNHKニュースです。新型コロナウイルスに感染したあと自宅で療養していた東京都内の30代の女性が自殺していたことが分かりました。残されていたメモには「自分のせいで迷惑をかけてしまった」などと書かれていたということです。ウイルスを排除しようとするあまり、ウイルス感染の当事者の心までを排除しようとする言動や雰囲気が無言の圧力となっていきます。感染対策として、一時的に隔離することはあってもどこまでも仲間として共存し励まし合っていく姿勢が、求められます。こうした心の抗体が必要なのは、感染している人もしていない人も同様なのです。ワクチンがなくてもお互いの配慮で心の抗体は育てていくことができます。
2021年 年頭の挨拶 その1
1.年末年始の病棟の様子
利用者の皆さん、職員の皆さん、年末年始いかがお過ごしでしたか? 一部の利用者の状態の急変も続いて、出勤されていた皆さんや当直や呼び出しの医師が協力でなんとか乗り切っていただいたと報告を受けています。その働きに感謝いたします。そして利用者の皆様職員一緒に、施設内でびわこ神社への参拝、書き初め、模擬餅つきなど、正月らしい取り組みをしていただきました。新型コロナ感染流行の中でこうした新しい年を祝う時間がもてたこと、ができたことに感謝したいと思います。
2.オンラインとリアル
新型コロナ感染の中で、社会が変わったことは、ソーシャルデスタンスです。オンライン面会、ZOOMによる、会議やミーティングが、我々も日常的に活用する事になりました。オンラインでは確かに、情報を伝えるにはとてもよいツールであることがわかりました。ただ、オンライン授業やテレワークで、どうしても満たされない思いが、募ってくることも多くの人に実感されました。精神的に孤独感や疎外感を感じる人も出てきたのです。人の息づかい、触れ合う感触や暖かさ、近づいたり、遠ざかったりする距離感が伝わらないのです。しかし、我々の施設びわこ学園医療福祉センターのケア現場は、密着しての、体位変換や食事介助、オムツ交換、まさしくリアルの現場です。手に、暖かさや重さ、顔に息づかいが伝わってきます。このリアルの現場の価値がソーシャルデスタンスをとらざるを得ない社会の中で、気づかされたのです。このリアルの世界の中で仕事できることに感謝しながら、その息づかいを、面会できない家族や触れ合えない生活をしている社会の人たちに、発信していく必要があります。
このような、何にも代え難いリアルの現場ですが、やはり感染のリスクは高い現場でもあると言えます。新型コロナを遠ざけていく時の考え方については、次回以降に述べます。
新型コロナ後の生き方を考える
新型コロナ後の生き方を考える
ステイホームが可能になるには、こうした医療福祉のスタッフがエッセンシャルワーカーとして現場にたち続けることで成立する。農業従事者、スーパーやコンビニの店員、宅配の運転手も同様だ。 第2波がきたとき、どうするか? 閉鎖か、縮小して維持か? 悩ましい。重症心身障害の方は、介護で密着すると同時に、健康維持のために、排痰処置など飛沫が飛び散るケアが必要となる。病棟にウイルスが入ってくればクラスター発生は不可避である。エッセンシャルワーカーとしての役割を果たし続けるために、十分な感染防護体制と備品が最低限必要だ。また、この間経済的損失や負担も多かった。多くの課題を残しながら第2波の出現に備える。救いは職員全員が、ひるむことなく立ち向かえた経験が積み重なったことである。
4.緊急事態宣言下の地域の仕組みとしてのこれからのショートステイ
6月末、滋賀県自立支援協議会の全体会が開催された。各圏域で、新型コロナ対策部会が設置されていた。そこで議論されたのが、ショートや通所の自粛、閉鎖。継続、濃厚接触者の判定や通所自粛を、事業所単独で考えるのではなく、その地域の保健所や福祉などの行政、自立支援協議会と一緒に考えていく方法である。その地域で不可欠なショートステイであれば、緊急事態宣言下でも機能を事業所に継続してもらう。そのかわり感染防護対策や備品などの体制は地域が責任を持つ。その中で万が一感染者が発生したときは、施設の自己責任論やバッシングは控えて、地域で行政が中心となり、人的サポートなど全力で支える応援チームを作る。こうした体制があれば、緊急事態宣言下でもショートステイの継続が可能となる。第2波では自己責任論ではない地域の仕組みとしての対応を準備したいものである。